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【番外編】八つ墓村(津山事件)と森田理論 ≪ 閲覧やや注意 ≫

講師:梅野 一男 先生(見立病院 副院長)

森田療法セミナー【番外編】

内容が恐いのでブログに掲載するかどうか散々迷いましたが、やっぱり書く事にします。
セミナー中の ”Coffee Break” という事でお話しが有りました。
私的には大変興味深い内容でしたので、今回ご紹介させて頂きます。

横溝正史の長編推理小説である『金田一耕助シリーズ』で有名な「犬神家の一族」等と共にテレビや映画で映像化された「八つ墓村」をご覧になられた方は多いのではないかと思います。

実はこの映画の題材となった事件は、1938年(昭和13年)に実際に起こった津山事件(つやまじけん)と言われています。
(私はふと、松本清張原作『砂の器』のSMAP中居正広さん主演テレビドラマの一場面を思い出しました)

事件そのものは「八つ墓村」や『砂の器』のストーリーとは全く違うのですが、村人を大量虐殺した津山事件の犯人の犯行時の風貌、異様な風体(※)をヒントにして横溝正史が映像化したと言われています。
(※)詰襟の学生服に軍用のゲートルと地下足袋を身に着け、頭にはハチマキを締めて小型懐中電灯を両側に1本ずつ結び付け首からは自転車用のナショナルランプを提げ、腰には日本刀一振りと匕首(あいくち)を二振り、手には改造した猟銃を持った。

津山事件は犯行前年の1937年(昭和12年)に徴兵検査を受けたが丙種合格(実質上の不合格で、結核が理由)とされた犯人がその事と持病の結核を村人達の心無い風評にさらされた事に不満を募らせた事が動機で、その結果凶行に及びました。

徴兵検査で不合格となるという事実が男性として不名誉そのもので有った事に加え、当時の村八分、差別が、現代人の我々には想像がつかない程に過酷で厳しく精神的に追い込まれた状態であった事は想像に難く有りません。
(ご注意:犯罪を肯定しているわけではありません)

その様な状況下に於いて自分を馬鹿にして虐げた村人に対し復讐を果たす事を決意するのですが、苦しい身体的症状に耐えながら犯行前に驚くほど緻密で用意周到な計画(※)を立て実行に移します。
(※)自ら自転車で隣町の駐在所迄走り住民が警察へ通報する迄の必要時間をあらかじめ計算したり、電柱によじ登って送電線を切断して特定エリアのみを全面的に停電させた。等・・・

そして犯行の前後にいくつかの遺書を書くのですが、残された一つにはこう記されていました。

「・・・・・全く復讐に生きる僕だった。ずいぶん無理をして起きもし、また歩きもした。
ひたすら恨みに燃えて動悸の高い心臓を押さえ、病気が出ていた胸を押さえて。
ところが不思議に治る観念を捨てたら、今迄の様な心配が無くなったせいか、少しも快方に向かわなかったのが次第に良くなっていった。
其の時の嬉しさ、これなら○○のきゃつ等や○○○の奴にも復讐できると思った・・・・。」(犯行後に最期の遺書を書いた後、猟銃で自害)

「心身症」というものが有ります。
簡単に言えば体調不良の原因に心の不調が関係している(ストレスの影響が体に現れる)のですが、具体的な症状としては過敏性腸症候群、神経性胃炎、狭心症、高血圧、緊張性頭痛、偏頭痛、自律神経失調症、腰痛症、肩こり、気管支喘息、心因性難聴、多汗症、口腔乾燥症、顎関節症、等ありとあらゆるものが有る事に驚かされます。

検査を受けても特に問題が無いにも拘わらず症状が有り、その事で何か重篤な病気にかかったのではないかと気になり、検査結果を疑い数多くの病院を渡り歩いて検査を繰り返すケースも少なくないそうです。(それでも検査結果は正常・・・)

津山事件の犯人が凶行前、凶行中にアドレナリン??が噴出して痛みを感じなかったのかどうかは定かではありません。
しかし、森田療法的な観点から言うと『不思議に治る観念を捨てたら・・・次第に良くなっていった。』と云う件(くだり)が、森田正馬先生の『どうにでもなれ、と服薬も止め、死んでもかまうものか。・・・このように決心して・・・したところ・・・と嘆いていた神経衰弱はどこかに吹き飛んでしまい、○○○も気にならなくなった。○○と思っていたのも神経症の症状であった。』と合致するのであります。

私自身もまた、季節の変わり目に頻発する痛くてたまらない口内炎やピリピリと痛い帯状疱疹後神経痛、慢性の腰痛も治そうとする事にとらわれず『どうにでもなれ!』と開き直ってみようかな? と思いました!
(ご注意:森田療法的、私=森田の『自己責任療法』です)

以上、番外編として記載させて頂きました。
(貴重なお話しをしていた頂いた先生に感謝しております)

 

2016年(平成28年)7月8日(金)

森田 研吾

 

 

株式会社ノース・ナイン・ステート
福岡・北九州のストレスチェック・メンタルヘルス企業
お役立ちできるEAP(メンタルヘルス外部相談機関)を目指します

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コメント

    • 清水清美
    • 2016年 7月 11日 2:12pm

    怖いと思って、読んでいったら別の怖さを感じました。1人の人間の哀しみがあんなにも多くの病気を引き寄せてしまった。もがく程に抜け出せない底なし沼のような感じが怖く、諦める事は受け入れる事と同じなのかなと思いました。
    今回も、勉強になり有難うございました。

    • 森田研吾
    • 2016年 7月 11日 8:11pm

    清水さん いつもブログを見ていただきありがとうございます。
    私とは違った角度からの観点、流石だと思いました。 1人の人間の哀しみ・・・確かにそうですよね。
    今後もブログは続けて行きますので一緒に学んで行けたら嬉しいです。
    それから、コメントの中に、諦める事は受け入れる事と同じなのかな・・・と有りましたが、
    森田療法で言う『受け入れる』とは何か? 今後のブログで書かせて頂きます。

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