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私のへなちょこ人生【第六話】 告白 ~ 「大キライなんです」

 

私のへなちょこ人生
第六話
告白 ~ 「大キライなんです」

 

偶然の出会いで、思いがけず自分が登校拒否になりかけていることを誰かに打ち明けた頃の私の状態は、ただ学校に行くのがイヤで、ストレスからの過食に走っているだけのそれよりも、既に深い闇に片足を踏み入れた状態にあった。孤独は癒されても学校という「現実モンスター」は存在し続けていて、学生と言う身分でありながらモンスターから身を隠していた、私の恐怖の妄想の膨らみがMAXに達してしまった。程なくして私は完全に学校へ行かなくなり、バイトも止めて、毎日自室にいる日々が始まった。その年の梅雨の頃のこと。

 

自室から出てこない私に、明らかに母親は動揺をしていた。起こしても起こしても布団から出ようとしない私に向かって、母は怒鳴った。何度も声をかけさせることに対してではなく、学校へ行かないことに対して、怒りの感情を持っていたのだ。無理矢理掛布団を剥ごうとするから、私も一生懸命抵抗した。「勝手にしなさい」私も好きでやっている訳ではないのだけど、他にどうすれば良いのか分からなかったからそうしていた。そんなやり取りを続けて、1週間ほどで母親が根負けをしてくれた。私の静かな、でも自室なのに、ものすごく居心地の悪い朝。

 

それからは登校することも無く、前期試験にも当然挑むことはできず、夏休みが過ぎ、学校は後期を迎えたけど、私は引き続き学校へは行かなかった、と言うか、自分がいきなり毎日欠席し続けた理由を“みんな”に「しなければならない」、と思い込んで行けなかった。このことを自意識過剰だったのだと納得できたのは、最近のことだけど。

 

本棚で背表紙がひっくり返ったままの分厚い教科書を見つめながらぼんやりしていたら、私に電話がかかってきた。凛ちゃんだった。私はまるで罪を犯して逃げ隠れていたところを突き止められたかのように、一瞬で凍り付いた気持ちになった。久しぶりにテレビと家族以外の声がした。「元気にしてる?夏休み前から見かけなくなったから、どうしてるかなと思って、同じ学部の子に連絡先を聞いたの。迷惑じゃなかったかな?」携帯電話の登場など、ドラえもんのポケットからしか出てこないと思っていた時代なので、当然自宅に電話をかけてきてくれた、それもわざわざ誰かに連絡先を聞いて。私は努めて明るい声色で「普通ではない」自分の生活状態について軽く説明をした。電話の向こうで凜ちゃんが静かに話を聞いてくれている様子、簡単に想像できたことをよく覚えている。そして凛ちゃんから「いつでもうちにおいでよ」と提案を受けてその電話を終えた。凛ちゃんは実家から離れて下宿生活をしながら学校に通っていたので、居たいだけいてくれて構わないと付け加えてくれていた。

 

私は衝動的に動き出した。その頃はほとんど会話もなくなっていた母親に「友達のところへ泊りに行ってくる」と告げて、凛ちゃんの家で何日間か過ごすことのできる持ち物を準備し始めた。私の急な言動に母親はしばらく黙って見ていたが、やっぱりな、と思う言葉が返ってきた。「出かけるのは止めておきなさい。今の電話の子は誰?お母さん、知らない名前の子なんだけど」私は意を決して気持ちを言葉にした。「だから、そういうのがキライなんだよ」この告白をキッカケにして、私の遅い反抗期が始まった。

 

第七話につづく…

 

 

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